2026.7.13
【注意喚起】地震に便乗した屋根修理詐欺の手口と対処法
各地で相次ぐ地震に便乗し、瓦屋根の高齢世帯を狙った屋根修理詐欺が発生しています。山形での逮捕事例をもとに、悪質業者の手口・コーキング固定の危険性・身を守る確認方法を、やねプロがわかりやすく解説します。
その「屋根がずれています」、本当ですか?──相次ぐ地震に便乗した訪問勧誘にご注意ください
各地で地震が続いています。「うちの屋根は大丈夫だろうか」。そう感じている方は、少なくないと思います。実は今、その不安な気持ちに狙いを定めている人たちがいます。
この数日で、震度6クラスの地震が相次いでいます
決して大げさな話ではありません。ここ最近、各地で強い揺れが続いています。2026年6月25日には岩手県沖を震源とするマグニチュード7.2の地震で青森県階上町が震度6強を観測し、その翌26日には山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6の地震で、富士河口湖町が震度6弱を記録しました。わずか2日のあいだに、東北と関東でそれぞれ震度6クラスの揺れが起きたことになります。
▶ 【青森・岩手県沖地震・震度6強】絶対に自分で屋根に登らないでください(2026/6/26)
▶ 【山梨県東部・富士五湖地震・震度6弱】絶対に自分で屋根に登らないでください(2026/6/27)
大きな揺れのあとは、「うちの瓦も大丈夫だろうか」という不安が一気に高まります。そして残念ながら、その不安を待っていたかのように動き出すのが、悪質な訪問業者です。次にご紹介するのは、実際に起きた事件です。
山形で起きた屋根のリフォーム詐欺未遂
2026年7月、山形県で、屋根修理をかたる詐欺グループ5人が逮捕されました。報道によれば、彼らは前年の夏、庄内町の60代女性の家を訪ね、屋根に何の異常もないのに「鬼瓦がずれている」「このままでは雨漏りする」と嘘をつき、110万円の工事契約を結ばせようとしたとされています。不安をあおる「アポインター」、契約を迫る「クローザー」と役割を分け、実在するリフォーム会社の名刺まで使っていたといいます。
被害が防げたのは、女性が代金を下ろしに行った銀行の窓口係が「おかしい」と気づき、警察に通報したからでした。そして警察の調べで、彼らが瓦屋根の家を狙って回っていたことも分かっています。この手口は、遠い誰かの話ではありません。地震のあと、あなたの家の玄関先でも起こりうることです。

なぜ、瓦屋根が狙われるのか
先日、一般社団法人全日本瓦工事業連盟が注意喚起の提言を発表しました。それを読んではっとさせられたのは、悪質業者の手口そのものよりも、彼らがつけ込む「隙間」の存在でした。
屋根を直せる職人は年々減り、高齢化も進み、事業所の数も減っています。だから地震のあとに修理の依頼が集中しても、まじめな屋根屋さんほど一件ずつ丁寧に対応するために、どうしても順番待ちが生まれてしまう。その「待たされる時間」と「早く直したい」という焦り。悪質業者は、まさにそこに付け込んできます。
彼らが瓦屋根の古い家を選ぶのは、近年新築の家はスレートや金属屋根の家が増えてきており、瓦屋根の家は住まい手が高齢で、瓦の知識が広まっていないことを知っているからです。

「コーキングで全面固定します」と言われたら要注意
連盟が特に警鐘を鳴らしているのが、「ずれた瓦をコーキング(シーリング)で固定します」という提案です。これは、「ラバーロック工法」と呼ばれます。屋根工事業界の中では、瓦の全面を固定するラバーロック工法は避けるべき、という考え方が主流です。
▶︎【動画あり】瓦の「ラバーロック工法」は大丈夫?雨漏り・地震リスクと悪質な営業の見分け方
コーキングは本来、隙間を埋めて防水性や気密性を保つための材料であって、瓦を固定するためのものではありません。瓦屋根は、瓦と瓦のわずかな隙間から雨水を逃がす「呼吸する」構造になっています。
その隙間をコーキングで塞いでしまうと、逃げ場を失った水が内部にたまり、かえって雨漏りを招くことがあります。瓦をしっかり留めるには、新築工事と同じように、釘やビスで一枚ずつ緊結するのが基本です。だからこそ、「コーキングで固定できますよ」という説明だけで契約を判断しないでください。

知っておいてほしい瓦の「ガイドライン工法」
瓦は地震に弱い、というイメージが世の中には根強くあります。でも、それは正確ではありません。連盟は平成13年から、瓦を釘やビスで全数留め付ける「ガイドライン工法」を業界の自主基準として推奨してきました。
実際、2024年1月の能登半島地震では、国の研究機関(国土交通省 国土技術政策総合研究所・建築研究所)の被害調査で、ガイドライン工法で葺かれた瓦屋根は脱落や損傷がほとんど見られなかったことが報告されています。震度6強クラスの揺れに2回さらされても、瓦は落ちませんでした。
つまり、正しく施工された瓦屋根は、きちんと災害に耐えます。倒れているのは「瓦だから」ではなく、「正しく留められていない古い施工だから」なのです。この一点を知っているだけで、訪問業者の言葉に振り回されにくくなります。

ご自身で確認できる2つのこと
① 屋根工事連盟への加盟状況を調べる
先述の全日本瓦工事業連盟(全瓦連)、または全日本板金工業組合連合会(全板連)への加盟状況を調べてください。もしくは、やねプロの「都道府県から屋根屋さんを探す」ページでも、各都道府県で連盟に加盟している会社を探すことができます。
② 建設業許可を調べる
国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、訪ねてきた業者の社名を入力すれば、許可の有無を無料・数分で確認できます。契約の前に、ぜひ一度。(ただし、一般的に500万円以下の工事には建設業許可が不要のため、建設業許可を有していなくても信頼できる屋根屋さんもいらっしゃいます。)
こんな言葉・状況に要注意
不審な訪問を受けたときは、次の4つを思い出してください。
「今日だけ」「今すぐ」という言葉には応じない
その場で契約しない(クーリングオフ制度があります)
見積もりは必ず複数社から取る
不安な場合は消費者ホットライン(188)に電話する
もし契約してしまっても
もう契約してしまった、という場合でもあきらめないでください。訪問販売による契約は、原則として契約書面を受け取った日から8日以内であれば、クーリングオフによって無条件で解約できます。書面またはメール等で「契約を解除します」と通知するだけで成立します。
少しでも不安があれば、まずお近くの消費生活センター(消費者ホットライン188)にご相談ください。冒頭の山形の事例でも、女性はクーリングオフの手続きをとったことで被害を免れています。
点検商法の被害に遭ってしまった場合の具体的な対処法は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▶ 点検商法の被害に遭ったらどうすればいい?解決法や相談先をご紹介
▶ 屋根が壊れていると言われた?屋根修理詐欺・屋根板金詐欺を解説
信頼できる屋根屋さんに、まずは相談してみてください
やねプロには、全国各地で実際に活動している屋根専門業者を掲載しています。地元を知っていて、地震後の対応にも慣れた業者に相談しましょう。
▶ やねプロ認定店一覧はこちら
▶ 各都道府県の信頼できる屋根のプロ一覧はこちら
※「やねプロ」では、工事業者情報の提供にあたり、一般の方・工事業者の双方からとも、送客手数料・契約手数料を一切いただいておりません。安心して比較・相談していただけるよう、中立な立場で情報をお届けしています。詳しくは下記のページからご覧ください。
公的な相談窓口としては、以下もご参照ください。
▶ 消費者庁
▶ 国民生活センター

おわりに──ハウスケープがやらないといけないこと
この記事を書きながら、あらためて考えていました。悪質業者がつけ込むのは、「早く直したい人」と「すぐには対応しきれない職人」との間にできる時間の隙間であり、同時に、瓦や屋根についての知識が、住まい手にまだ十分に届いていないという情報の隙間です。
私たちハウスケープが、信頼できる屋根屋さんを紹介する仕組みづくりや、こうした情報発信を続けているのは、その隙間を少しずつ埋めていきたいからにほかなりません。地元で長く誠実に仕事をしてきた屋根屋さんと、困っている施主の方とを、直接つなぐこと。屋根や住まいの正しい知識を、当たり前に手の届くところに置いておくこと。それができれば、悪質業者が入り込む余地は、確実に小さくなっていくはずです。
正直に言えば、職人の高齢化も、人手不足という構造も、私たちだけですぐに変えられるものではありません。それでも、正しく知っている人が一人増えれば、守られる家が一軒増える。その一軒の積み重ねを信じて、できることから精進していきます。
執筆・監修:やねプロ編集部(ハウスケープ株式会社)

