2026.3.31
「管理会社の依頼」を装い部屋に上がり込む――若者を狙った点検商法が急増中
「換気扇の点検に来ました」――そう言って部屋に上がり込み、高額な商品を売りつける。マンションに引っ越したばかりの若者を狙った「点検商法」の被害が、いま全国で急増しています。
2024年度の点検商法に関する相談件数は1万9249件。わずか5年で3倍超に膨れ上がりました。特に被害が集中しているのが、一人暮らしを始めたばかりの20代の若者です。生活に不慣れで、管理会社と悪質業者の区別がつかない。その隙を突かれるケースが後を絶ちません。
国民生活センターは、新生活が始まる4月は特に注意が必要だと呼びかけています。本記事では、実際に起きた被害事例をもとに、点検商法の手口と具体的な防衛策を解説します。
管理会社の関係者と思い込ませる巧妙な手口

兵庫県で報告された事例では、新築賃貸マンションで一人暮らしを始めたばかりの20代女性が、作業着姿の男の訪問を受けました。インターホン越しに「キッチンの換気扇の掃除の仕方を説明し、点検をします」と告げられ、女性は管理会社の関係者と思い込んで男を室内に通してしまいます。
男は換気扇のカバーを外して眺めた後、かばんからフィルターを取り出し「ほかの入居者も購入しています」と勧誘。女性は「買わないと帰ってくれない」と感じ、フィルター計25枚を購入させられました。この男は管理会社とは一切無関係の業者でした。
(参考:「点検商法」狙いは若者、「管理会社の依頼」装い部屋に上がり込む手口…新生活始まる4月「特に注意を」)
被害の8割超が20代、フィルター1枚に最高3万円
兵庫県立消費生活総合センターによると、この業者に関する相談件数は約2年間で46件にのぼり、フィルター1枚あたり最高3万円という法外な価格で販売していました。相談者の8割超にあたる39件が20代からのもので、引っ越し直後のタイミングで訪問を受けるケースがほとんどだったといいます。
兵庫県は2026年2月、管理会社の関係者が来たと誤認させたまま売買契約を結ばせたとして、この業者に対し特定商取引法違反(事実不告知など)で1年間の業務停止命令を出しました。
通信設備の点検を装うケースも
関東地方でも同様の被害が確認されています。マンションに住む20代女性のもとに「通信設備の点検」として訪ねてきた業者が、インターネット回線の契約を迫ったケースでは、事前にポストにチラシが投函されていたため、女性は「応じないといけない」と思い込んだそうです。幸い、管理会社に問い合わせたことで契約せずにすみました。
点検商法から身を守る7つの防衛策
引っ越し直後は生活に不慣れで、冷静な判断が難しくなりがちです。以下のポイントを事前に押さえておくだけで、被害を未然に防ぐことができます。
1. 突然の訪問にはドアを開けない
管理会社や設備業者を名乗っていても、事前に連絡がない訪問にはドアを開ける必要はありません。インターホン越しに「会社名」「担当者名」「訪問の目的」を確認し、少しでも不審に感じたら「後日、管理会社に確認してから対応します」と伝えましょう。正当な業者であれば、それで問題なく引き下がります。
2. 管理会社に自分から連絡して裏を取る
「管理会社の依頼で来ました」と言われた場合、その場で管理会社に電話して事実確認を取りましょう。このとき、訪問者が差し出す名刺や連絡先ではなく、契約書類に記載されている管理会社の番号に自分でかけることが重要です。悪質業者が偽の連絡先を渡すケースもあるためです。
3. 「他の入居者も」「今だけ」の言葉に乗らない
「他の入居者もみなさん購入されています」「本日中であれば特別価格です」といった言葉は、点検商法の常套句です。焦って判断させるのが業者の狙いなので、「検討します」と言ってその場を切り上げましょう。本当に必要な商品やサービスであれば、後日でも購入できるはずです。
4. 室内には絶対に上げない
一度室内に入れてしまうと、心理的に断りにくくなります。玄関先での対応に留め、「中に入る必要がある」と言われても応じないのが鉄則です。正規の点検であれば必ず事前通知があり、日時も事前に調整されます。
5. 作業着・制服に騙されない
作業着やヘルメット、バインダーを持っているだけで「本物の業者」と信じてしまいがちですが、見た目は簡単に偽装できます。身分証の提示を求め、所属会社を自分で調べて確認する習慣をつけましょう。
6. 引っ越し前に管理会社の連絡先を控えておく
入居時に受け取った契約書類や重要事項説明書に管理会社の連絡先が記載されています。スマートフォンの連絡先に登録しておけば、不審な訪問があったときにすぐに確認の電話ができます。
7. 家族や友人にも情報を共有する
一人暮らしを始めたばかりの家族や友人がいれば、こうした手口があることを事前に伝えておきましょう。「知っている」だけで、いざというときの判断力が大きく変わります。
契約してしまった場合の対処法

万が一、その場の雰囲気に押されて契約・支払いをしてしまっても、諦める必要はありません。
訪問販売で契約した場合、特定商取引法に定める書面(契約書面)を受け取った日から8日以内であればクーリングオフ制度で無条件に契約を解除できます。業者に書面で通知すれば、全額が返金されます。
ただし注意したいのが、悪質業者の場合、クーリングオフを申し出ても連絡が取れなくなったり、会社ごと姿を消してしまうケースがあるということです。所在地がレンタルオフィスだった、電話番号が使われていない、といった事態は珍しくありません。こうなると、制度上は返金の権利があっても、実際にお金を取り戻すのは極めて困難になります。
だからこそ、最も有効な対策は「その場では絶対に支払わない」ことです。現金で払ってしまえば追跡が難しくなります。どうしても断り切れない状況になった場合でも、「手持ちがない」「カードを持っていない」と伝えてその場での支払いを避け、すぐに消費者ホットライン(188)に相談しましょう。
また、クレジットカードで支払った場合は、カード会社に連絡して支払いの停止(抗弁)を申し出ることで、引き落としを止められる可能性があります。現金払いよりも被害回復の手段が残りやすいため、万が一の際は覚えておいてください。
屋根の点検商法にも同じ構図
点検商法の相談件数は2024年度で1万9249件と、5年前の3倍超に急増しています。今回の事例は換気扇フィルターや通信回線でしたが、屋根や太陽光発電の点検を装った詐欺も数多く報告されています。「近くで工事をしていたら屋根が壊れているのが見えた」「このまま放置すると雨漏りしますよ」などと不安を煽る手口は、まさに同じ構図です。
訪問者がどれだけ親切そうに見えても、事前連絡なしの「点検」には応じないこと。それが、自分の暮らしを守る第一歩です。
屋根の点検や修理が必要なときは「自分で選んだ業者」に依頼を
とはいえ、屋根は実際に定期的なメンテナンスが必要な場所でもあります。大切なのは、突然訪ねてきた業者に任せるのではなく、自分で信頼できる業者を選ぶということです。
やねプロでは、独自の審査基準を通過した全国の屋根工事業者のみを「やねプロ認定店」として掲載しています。お住まいの地域で信頼できる屋根屋さんを探したいときは、ぜひご活用ください。「飛び込みの業者に言われて不安になった」という方も、まずは認定店に相談してセカンドオピニオンを取ることで、不要な工事や不当な請求を防ぐことができます。
まとめ
本記事のポイントを振り返ります。
点検商法の被害が急増中:2024年度の相談件数は1万9249件、5年前の3倍超
若者が集中的に狙われている:被害相談の8割超が20代。引っ越し直後が最も危険な時期
手口は巧妙:作業着を着て管理会社を装い、「換気扇の点検」「通信設備の確認」など生活に密着した名目で部屋に入り込む
最大の防御は「ドアを開けない」こと:事前連絡のない訪問には応じず、必ず管理会社に自分から確認を取る
その場で絶対に支払わない:クーリングオフ制度はあるが、悪質業者は連絡が取れなくなるリスクがある。払わなければ被害は発生しない
困ったら188:消費者ホットラインに電話すれば、専門の相談員が対応してくれる
屋根の点検・修理は自分で業者を選ぶ:飛び込み業者に任せず、やねプロ認定店など信頼できる業者に相談を
屋根の点検商法も、換気扇フィルターの押し売りも、根本の構図は同じです。「知らない人が突然やってきて、不安を煽り、その場で契約させる」。この流れに乗らないことが、最も確実な防衛策です。
